2024/02/04

訪問看護|オンコール対応の課題と対策について

この記事では、訪問看護におけるオンコール対応の課題と対策について解説します。オンコール対応は訪問看護業界において重要な取り組みである一方、看護師および事業所への負担が大きい業務です。訪問看護ステーション等の事業者さまは、円滑な看護サービスを提供するために参考にしてみてください。

訪問看護のオンコール対応について

まずは、訪問看護のオンコール対応の概要と仕組みを解説します。

(1)概要

訪問看護のオンコール対応とは、24時間体制で患者やその家族からかかってくる電話に対応するための待機勤務のことです。状況に応じて自宅を訪問し、適切な処置を行う場合があります。基本はひとりで待機するため、緊急の電話がかかってきた際は、処置の方法や訪問すべきかの判断を看護師が行います。

(2)主な業務

訪問看護のオンコール対応は、通常の看護師の勤務形態と異なり、24時間365日緊急時に電話対応できる状態で待機しなければなりません。待機場所は必ずしも医療機関である必要はなく、自宅や外出先など普段の生活を送る中で電話がかかってきた場合に対応します。しかし、緊急時に訪問する可能性があることから、迅速に対応するために自宅で待機するのが基本です。また、企業によってオンコール対応には手当があり、一般的に待機中は1回につき1,000円~3,000円、緊急訪問を行った場合は訪問時間に応じた時給換算された手当が支給されることもあります。

訪問看護におけるオンコール対応の重要性

オンコール対応は、訪問看護業界において重要な業務です。ここでは、訪問看護のオンコール対応の重要性を解説します。

(1)訪問看護の需要拡大

‌近年、在院日数は短縮傾向にあります。これは、医療技術の進歩による入院期間の短縮、患者自身の在宅療養の増加、高齢化社会における増大する国民医療費の抑制によるものです。この在院日数の短縮化は、同時に在宅療養の増加につながっており、必然的に訪問看護のオンコール対応が重要になっています。

(2)患者と家族の安心感の確立

在宅療養が必要な患者やその家族は、容体急変の可能性に不安を抱えています。しかし、訪問看護のオンコール対応が整備されていることによって、いつでも必要なときに看護師と連絡がとれるという安心感を得ることができます。これにより、患者と家族は病状に対する不安を軽減し、安心して在宅での治療を受けることができます。このことから、在宅療養が増加する現代の医療社会において、オンコール対応は重要と考えられます。

(3)緊急時の迅速な対応

一般的な医療機関は、土日診療を行っていない場合がほとんどです。しかし、訪問看護の現場では患者の状態が急変する可能性があり、迅速かつ適切な処置がなければ人命に影響を及ぼしかねません。このように、容体の急変リスクが高い在宅医療患者にとって、迅速な処置が受けられる訪問看護のオンコール対応は大切な命を守るうえで必要なのです。

訪問看護におけるオンコール対応の課題

在宅医療を必要とする患者にとって、訪問看護のオンコール対応は非常に重要なサービスです。しかし、オンコール対応を円滑に実施するためには、対応する看護師や事業所における課題を解消する必要があります。ここでは、訪問看護のオンコール対応に関する主な課題をご紹介します。

(1)看護師の人手不足

現在、訪問看護を含む医療機関全体の看護師不足が課題になっています。以下は、看護師不足に挙げられる主な原因です。

  • 高齢化社会における看護需要の拡大
  • 在院日数の短縮化に伴う在宅医療の需要拡大
  • 看護師の業務過多による定着率の低下

さまざまな原因で看護師の人手不足は深刻化しています。在宅医療の需要が増加しているとはいえ、看護師が足りなければ適切な医療処置を受けることができません。患者やその家族の不安は大きくなるばかりです。この問題は、訪問看護にとどまらず、医療業界全体で早急に解決が必要といわれています。

(2)看護師の業務負担の大きさ

看護師の人手不足は、看護師ひとりあたりの業務負担が大きくなることを意味します。通常、訪問看護の看護師が担当する患者数は、平均15人前後、1日平均3~5件の訪問による自宅看護が基本です。しかし、看護師が不足していると、看護師ひとりが担当する患者数を増やさなければなりません。これは、看護師のモチベーション低下につながり、最悪の場合は離職に至ってしまいます。そのため、訪問看護の事業所は、人手不足の解消はもちろんのこと、働く看護師の業務量や負担等を随時把握し、必要に合わせて業務量の調整を行うなどの対策が必要です。

(3)看護師の定着率の低さ

医療業界全体で、看護師の定着率は低い水準です。考えられる理由は、業務の負担と責任の大きさ、不規則な勤務形態等が挙げられています。なかでも、訪問看護の看護師は、一般的な医療機関に勤める看護師に比べて離職率が高いというデータがあります。厚生労働省の「訪問看護の伸び悩みに関するデータ」によると、平成19年度の訪問看護業界全体の離職率は15%となっており、一般病院の離職率の12%より高いことが報告されています。また、有効求人倍率においても、募集に対して応募数は半分以下にとどまっており、訪問看護の需要に対して供給が伴っていないのが現状です。

(4)スケジュール調整の難しさ

訪問看護では、患者やその家族だけでなく、看護師の都合で突然のスケジュール変更が頻発します。しかし、看護師が担当する患者は複数であり、多くの方がかかわっているため、スケジュール調整は容易ではありません。その中でも、サービスの質を維持しつつ対応しなければならないため、事業管理者を中心に急な日程変更に対処できる事前の準備をしておくことが必要です。

訪問看護におけるオンコール対応の対策

訪問看護のオンコール対応に関する課題を踏まえて、ここではオンコール対応の対策について解説します。円滑な訪問看護を実施するために、参考にしてみてください。

(1)オンコール対応可能な看護師の確保

看護師の人手不足は、オンコール対応における大きな課題です。いくら需要があっても対応できる看護師の数が足りなければ円滑な運営はできません。そのため、まずはオンコール対応可能な看護師の確保が必要です。看護師の確保には、定着率の向上、新規採用の増加が挙げられます。定着率の低さは事業所によって異なるため、看護師へのヒアリング等を実施し、会社に対する不満や要望を把握したうえで対策を練るのが効果的です。また、看護師が働きやすい環境が構築できると、自然と求人応募が集まります。看護師不足は事業所の運営に関わる重大な問題のため、早急な対策が必要です。

(2)オンコール対応マニュアルを整備する

オンコール対応マニュアルを整備することは、看護師の精神的ストレスの軽減や円滑な業務の遂行に効果的です。オンコール対応の看護師のなかには、ひとりで判断することに不安や負担を感じている方がいます。とくに、経験の浅い看護師は迅速な判断をとることが難しく、看護師のストレスはもちろん、患者の容体にも危険を及ぼしかねません。しかし、オンコール対応マニュアルがあることで、迅速な判断と対応、適切な指示を行うことが可能になり、なおかつ看護師の心理的ストレスの軽減につながります。

(3)緊急訪問時の直行直帰が可能な体制を構築する

訪問看護のオンコール対応では、緊急時に訪問が必要です。訪問する際、カルテや処置に必要なものを事業所まで取りに行き、そこから患者宅へ向かうのは、看護師の身体的負担が大きくなります。これは、看護師の不満と離職につながる要因です。さらに、緊急を要する訪問に対して、事業所を経由するほど時間的な余裕はありません。これらを解消するために、緊急訪問時に看護師が直行直帰できる体勢の構築が推奨されています。具体的な対策としては、以下のものが挙げられます。

  • 電子カルテや電子勤怠システムの導入
  • モバイル端末の支給
  • 緊急訪問時に必要なものの持ち帰り

電子カルテや電子勤怠システムを導入することによって、緊急訪問時に事業所を経由する必要がなくなります。看護師の負担だけでなく、迅速に患者宅へ訪問できるため、その家族の不安を取り除くことにも効果的です。しかし、デジタル技術の導入にはコストがかかります。そのため、導入を検討する際は医療DXコンサルタントなど、専門家に相談して判断することが必要です。

(4)看護師の待遇を改善する

訪問看護におけるオンコール対応の対策には、看護師の待遇改善が欠かせません。具体的には、給与や手当の増額、働きやすい労働環境の整備などです。とくに給与や休暇取得に関しては、看護師のモチベーション向上をもたらすため、定着率の向上と、看護師の確保に期待できます。

(5)休暇等の福利厚生を充実させる

オンコール対応の看護事業所は、特別休暇などの福利厚生を充実させることが効果的です。オンコール対応の当番日数は、事業所によって異なります。一般的には、看護師の公休日に担当するケースが多く、実質オンコール対応の看護師は24時間365日心身ともに休まるときがありません。これは、十分な休息が取れていないことを意味しており、その結果、集中力の低下によるミスや体調不良による離職につながってしまいます。医療事故や看護師の人手不足を防ぐためにも、福利厚生を充実させて働きやすい環境を整えることが重要です。

まとめ

訪問看護におけるオンコール対応は、迅速かつ適切な判断が求められる重要な業務です。より良い訪問医療を提供するためには、課題である看護師の人手不足や業務負担の軽減等に取り組む必要があります。政府が取り組む「看護師の復職支援」や「看護師の定着率向上に関する支援」を活用し、看護師の働きやすい環境を目指してみてください。その結果、オンコール対応を利用したい患者に質の高い看護サービスを提供することにつながります。

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